nehan CIRCLE / 八ヶ岳

仕事のあとの人生を、
先に始めた人たちの集まり。

人類、引退

仕事は、AIがやる。

もう、決まったことです。

ニュースは「危機」と言う。

私たちは「卒業」
呼ぶことにした。

考えてみてほしい。

人類は一万年、
働きづめだった。

やっと、終わる。

さて、
何して遊ぼうか。

01 ── 2029年

仕事の中身が、
先に消える。

昨日3時間かけた資料が、夜のうちにできている。直すところがない。承認を押す。
給料も席も残る。空くのは、中身だけ。
最初に来るのは失業ではなく、忙しかった人の「今日、何をしたんだろう」。

02 ── 2033年

水曜の昼の公園が、
混んでいる。

仕事は本当に減った。若い人は就活をせず、中高年は早期退職の金と時間を持つ。
国会で、週休三日と、働かなくても配るお金の話が予算として出る。
そして国民的な悩みが一つに絞られる。
時間はある。金もある。で、何をすればいい?

03 ── 会社は、給料以外に何をくれていたか

朝、起きる理由。

肩書き。

今日やることが、決まっている安心。

顔を合わせる人。「お疲れさま」と言う相手。

入社式。送別会。社員旅行。定年退職。百年前は、寺と村と家族がやっていたこと。

会社は稼ぐ場所ではなく、
居場所と意味の、配給所だった。

AIが止めるのは、この配給。給料が残るぶん、気づくのが遅れる。

04 ── タダだったものが消えると、産業になる

家族が見ていた → 十兆円を超える産業に。

祖父母と近所 → 保育園、学童、シッター。

職場とお見合いおばさん → 相談所とアプリ。

歩く暮らしと畑 → ジムとランニングシューズ。1970年より前、街を走る大人はいなかった。

村の寄合 → 葬儀社。

会社がくれていた、居場所と意味。

居場所は、買うものになる。

介護産業ができたとき、慌てて探した人ほど高いものを買った。居場所も、同じ順番で来る。

05 ── もう、名前を変えて始まっている

やっていることは同じ。毎週同じ人と集まる。一緒に食べる。節目を祝う。相談する。
百年前は寺と村がやっていた。宗教という言葉は嫌われたが、中身の需要は消えていない。

宗教は、コミュニティと
名前を変えて戻ってくる。

これから、会費と役割と拠点と年間行事を持つ。組織図があり、当番があり、夏至と冬至に全員が集まる。会社みたいな形に。
会社が家だった時代の次は、コミュニティが家になる時代。

06 ── 2033年の駅前に、六軒の店

英会話とプログラミング教室の跡に、入っているもの。

覚えている人

半年前の話を覚えていて「あれ、どうなった?」と聞いてくれる人。月額制。答えは出さない。

会費制の食卓

週に一度、同じ顔と飯を食う。畑つき。売っているのは料理ではなく、帰る場所。

切り替え合宿

退職、別れ、子の独立の直後に一週間こもる。昔はMBAと留学がやっていた役。

修了証のない学校

大工、米、味噌、太鼓。残るのは作品と、一緒に作った仲間。

儀式屋

退職式。別れの式。終わったことを、人の前でちゃんと終わらせる。

電波の届かない宿

入口で端末を預ける。それだけが売り。しかも高い。

六軒とも売っているのは、「何のために生きているか」。
まとめて、意味の産業と呼んでいる。

last month, yatsugatake

火を囲んで、歌っていた。

気づいたら、朝だった。

知らない人と踊って、

知らない自分に会った。

引退した人類がやることは、

三つしかない。

遊ぶ

魂が震えることだけを、やる。音、火、ダンス、湯気。理由は、あとから来る。

語る

なぜ生きるのか。ひとりでは出ない答えが、車座の中には落ちている。

手を動かす

水を汲む。火を焚く。米も、作れる。AIに頼まない一日は、思ったより長くて、いい。

05:30

目覚まし時計は、使わない。

零度の水に、
五分。

ちなみにこの建物は、

全部、自分たちで建てた。

図面を引いて、木を切って、床を張った。
三ヶ月かかった。

具体的には、こういうこと

回によって、起きることは違う。
流れているものは、いつも同じ。

ぜんぶ、実際に起きたこと

写真は、すべて八ヶ岳の nehan で撮られたものです。

また来るね、と言って帰る。

たいてい、また来る。

the place

場所は、八ヶ岳。

800標高 m夏、冷房がいらない
2東京から 時間金曜の夜に、来られる
20温泉毎回ちがう湯に入る
12移住した人先に引退した人たち

引退した人類の、ふつうの一日

誰かが太鼓を叩いて起こしてくる。断る権利はある。使う人はいない。

零度の水に、五分。全員、叫ぶ。ここで一日が始まる。

サウナ。三人入ると、二人が人生相談を始める。残る一人は、寝ている。

湧水を汲みに行く。それで珈琲を淹れる。名水百選・大滝湧水。コンビニは車で15分。誰も行かない。

パソコンを開く。AIに「今日の分」を頼む。一時間で終わる。残りの23時間は、AIの担当外。

玄関に野菜が置いてある。誰も注文していない。犯人は、たぶん隣。

田んぼに入る。誰かが泥で転ぶ。転んだ人が、いちばん笑っている。

昼寝。会議は、ない。

富士山が、赤くなる。全員、黙る。毎日見ているのに、毎日黙る。

鍋。二十人。誰の家かは、もう誰も気にしていない。

火を焚く。ギターが出てくる。踊り出すやつがいる。止める人は、いない。

温泉。二十のうちの、今日の一つ。

星が多すぎて、星座がわからない。スマホで調べようとして、預けていたことを思い出す。

まだ、喋っている。議題はない。結論も出ない。誰も困っていない。

これで、平日です。
有給は、使っていません。

ここでは月に一度、

引退した人類が集まっている。

CIRCLE

人類引退後の、遊び場。

月に一度の、開いた日。会員でなくても来られます。

2040年から、今日を振り返る

「いつから始めたんですか?」

2040年、人は肩書きではなく役割で呼ばれている。火の人。田んぼの人。話を聞く人。
周りに人が集まっている人は、だいたい同じ答えをする。「2026年とか、2027年とか。まだみんな働いてた頃」。
居場所は買った日にはできない。同じ人に何度も会った年数だけが、居場所になる。

差は、能力でも金でもなく、
始めた日の早さだけ。

先に始めた人が、2026年にやった五つ

会社の外に、役割を一つ持つ。田んぼの当番でも、火の番でも。「あなたがいないと困る」場所。

身体を運ぶ場所を、一つ決める。

月に一度、同じ人たちと会い続ける。

終わったことを、誰かの前で「終わった」と言う。

月に一日、通知を全部切る。

八ヶ岳の月に一度の集まりは、この五つを一日に入れたもの。

入口は、二つ

nehan Circle(会員制・2年)に入れるのは、走馬灯をみる旅を終えた人だけです。
このページにあるのは、その手前。月に一度の、開いた日。

このページに書けなかったことを、LINE で順番にお届けしています。全7話、三週間。
先に短くした国で起きたこと、定年後の男性に起きていること、意味はどこで作られてきたか。次の集まりの案内も、ここから。
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引退は、定年を待たなくていい。

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